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純粋「三丁目の夕日」批判

 朝日のオピニオン欄「異議あり」が面白かった。三度映画化されるという「三丁目の夕日」、その世界を、経済学者の飯田泰之氏が厳しく批判しているのだ。団塊の世代の人口が多く彼らにうけるのだから「三丁目」の人気が高いのは当然としながら、飯田氏は質問にこう語る。

 ――日本では社会の改革期に、ともすると懐古趣味が現れる、とお考えだとか。
 「例えば倒幕運動のスローガンである尊皇思想は一種の懐古運動です。ただし、その目標である『勤王の世界』は、現実には存在しない理想の対象でした。その虚構を原動力にしつつ、ある時点で上手に反転できたから、近代日本がある。昭和初期にも理想化した日本を懐古する向きがありましたが、このときは大失敗しました」

 ――懐かしむのが悪いことだとは思えませんが。
 「そもそも昭和30年代はどういう時代かといえば、殺人や強姦などの凶悪犯は現在よりはるかに多く、国民の所得は低い。環境破壊もひどく、各地で公害病が問題になった。しかし、こういった負の側面は娯楽映画では取り上げられません。長所を極端にデフォルメして作られた世界観。つまりはハイパーリアリティーとしての昭和30年代が『三丁目の夕日』の舞台です」

 「実は昭和30年代は一番、成り金が生まれた時代なんですよ。この時代のリアルなおもしろさは、治安は悪いし衛生環境も悪い。生活水準も低かったけど、頑張ったら成功できるかもしれないと、みんなが思ったところにあります」
 「経済成長に伴う階層移動と、人と人がつながるコミュニティーとの間に緊張関係が乏しい『三丁目の夕日』は、だから上手に作られたフィクションなんですよ。ただ、いささか逆説的に言えば、僕らはその矛盾する両方がほしいと思っている」----


 そして飯田氏は、昭和ノスタルジーから卒業するためには経済成長で未来を指向しないとだめだと言い、こう締めくくる。「要は、僕たちがまだ見たことのない、平成の『三丁目の夕日』の世界を、どうやってつくるかだと思います」。

 よく言ってくれたと思う。賛成賛成大賛成! 昔は水洗便所もなく、道路の側溝は汚く臭かったしね。(それだけではないが)。そのうえで疑問点を挙げる。最初の方にこういう言葉がある。
 「団塊世代にとって『三丁目の夕日』は素晴らしい時代なんです。人の記憶は都合よく修正される。これをセレクティブメモリーといいます。子どものころや青春時代の記憶は大抵楽しいでしょう。昭和30年代はこの世代にすればまさにそういう時代」。

 ひとくくりにすればそういうことになるかもしれないけど、団塊世代にしてもあの時代の記憶、思い出が必ずしも楽しいとは言えないのではないか。
 そしてハイパーリアリティーとわかっていて、そのうえで楽しんでいる人たちもいるのではないか。理論というのはある世代や階層などをひとまとめにしないと論が進まないかもしれないが、十把一絡げそのものが今は問われているのではないか。

 それとこれは聞き手の記者の質問へのいちゃもんだが、「日本では社会の改革期に、ともすると懐古趣味が現れる、とお考えだとか」とあるが、日本だけではない。世界共通であり、革命はすべて復古反動だということ。それと「懐古趣味」って、「趣味」ってもんじゃないだろう。


 ともあれ『三丁目の夕日』にはっきりした批判論が出てきたのには快哉! というかホントはここが議論のスタート点だろう。けっこう今の日本の問題、嘘、偽善を浮かび上がらせるいい材料ではある、三丁目は。

 飯田さんは35歳だという。あのね、オジサンたちもけっこう辛く大変な時代を経てきたのですよ。三丁目が薔薇色と単純に思ってるわけじゃないと思いますよ。強いて言えばこのインタビューの聞き手の記者の、映画に「グッとくる」に代表される感性が問題なのだと思う。飯田氏のコメントをうまく引き出す作戦だというかもしれないが、質問のしかたによっては、もっと深い答が引き出せたかもしれないのに。


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  • 2017.11.27 Monday
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[憲法]“三丁目の夕日症候群”よりも悪質なもの
 たまった録画テープを整理しようと思って、何が入っているか調べると、『三丁目の夕日’64』が入っていました。  昨年年末頃にTVで放送されたのを録画して、そのまま忘れて放置していたようです。  というわけで、見てみました。  率直に楽しめる娯楽大作、という
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