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「使用済み」という言葉の嘘と罪

 日本の戦後を描いた「敗北を抱きしめて」でピュリツァー賞を受けたジョン・ダワー氏が新聞のインタビューに答えていた。いくつか記憶と心にとどめておきたい言葉、論点があった。
 まず氏は、震災が日本にとって第2次世界大戦の敗戦以来の危機という見方に対し、

 ----おそらくそうでしょう。----しかしそれでも、第2次世界大戦が引き起こした人命の損失と物的破壊の規模は、日本の国内に限っても、今回の震災よりすさまじいものでした。----

 と冷静に見る。そしてなぜ世界の支援、同情が大きいかについて、こう言う。

 ----いま世界中の人々が日本の苦境に気持ちを重ね合わせているのではないでしょうか。結局、われわれは同じ人間なのだ、みんな同じ人類なのだという感覚です。貧しい途上国もなけなしの財政から日本に支援を寄せ、日ごろは日本と必ずしも友好的でない国の人々も日本を応援しています。一国に対する同情的感覚がこれだけ広がったのはめったにないことです。

 ----問題は、この現象がどれだけ続くのか、ということでしょう。この感覚があるうちに他国との連隊をどう築くのか。これが日本にとっての課題です。----

 さらにこう言う。

 ----90年代のバブル経済の崩壊以来、日本は自信を失って、心理的に暗かった。しかし、今回の危機で明らかになったのは、日本社会のしなやかな強さでした。

 ----被爆国である日本が、原発事故という形で新たに放射能の恐怖に襲われたことは、これは歴史の悲劇的な巡り合わせとしか言いようがありません。

 ----問題は、この事故を受けて、エネルギー政策をどう考え直すかということです。いままでの議論は幅が狭かった。原子炉をどう守るかという議論ばかりしていましたが、今回の使用済み核燃料の問題は、「使用済み」という言葉と裏腹に、非常に危険で取り扱いに注意を要するものだということも分かりました。

 ----個人の人生でもそうですが、国や社会の歴史においても、突然の事故や災害で、何が重要なことなのか気づく瞬間があります。すべてを新しい方法で、創造的な方法で考え直すことができるスペースが生まれるのです。関東大震災、敗戦といった歴史的瞬間は、こうしたスペースを広げました。そしていま、それが再び起きています。しかし、もたもたしているうちにスペースはやがて閉じてしまうのです。既得権益を守るために、スペースをコントロールしようとする勢力もあるでしょう。結果がどうなるかは分かりませんが、歴史の節目だということをしっかり考えてほしいと思います。----


 いや恐れ入りました。おっしゃる通りです。で、考えたこと。
 世界各国の同情的感覚がいつまで続くかということと同じように、日本の中で東北に対する同情、支援がいつまで続くかということ。多分にそうした空気、感覚はテレビを中心としたマスコミが醸成する。いやすでにそうしたニュアンスが垣間見えてきてますね。「東北は日本のお荷物、不良債権」みたいな。でなきゃ震災の報道に続けてネズミのキャラクターの国なんかやるか?

 それから「使用済み」という言葉の欺瞞性、策略性。最も危険だということ。この言葉に市民権を与え、定着させた行政、学者、マスコミはすべて懺悔してほしい。言葉の力は大きい(逆の意味でも)。

 「すべてを新しい方法で、創造的な方法で考え直すことができるスペース」がせっかく生まれても、「もたもたしているうちにスペースはやがて閉じてしまう」。今の政権がまさにそれを加速している。危険な「使用済み」内閣だ。

 PS。今回のは朝日に載ったものだが、珍しく(失礼)翻訳も文章もよかった。読みやすく、的確な言葉遣いとセンテンスでした。ダワー氏の考えを歪曲することなく(当たり前だが少ない)伝えていた。


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  • 2017.05.10 Wednesday
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すべてを新しい方法で、創造的な方法で考え直すことができる
 ----問題は、この事故を受けて、エネルギー政策をどう考え直すかということです。いままでの議論は幅が狭かった。原子炉をどう守るかという議論ばかりしていましたが、今回の使用済み核燃料の問題は、「使用済み」という言葉と裏腹に、非常に危険で取り扱いに注意を
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