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言葉によって事物が存在を開始する

僕の中にも弱さがあって、この世界の成り立ちとか意味とか根拠を保証する説明原理を求めようとしたこともあった。これが時には神だったり、それが駄目だと全部無だと言ったりする。しかしこの弱さにおぼれている限り実体論のワナからのがれられないし生成論はおろか関係論にも立てません。
 意味可能態が「意味化」を求めている。
 「すべての反antiは、それが立ち向かう相手の本質の中に必然的にとらわれている」(ハイデガー)
 〈反一〉を提起しながらもそれが同じ実体論ではないと言うことはいかなる場合に可能となるのであろうか。実体論に陥らない実体論批判ははたして可能か。
 実体論=1.広義のレアリスム。1.<真理志向><絶対的根拠志向>
<真理志向>は人文・社会・自然科学と宗教に通底するぬきがたい実体論の現れなのである。
だが、関係論にも問題点=相手も同じ相対論でないと通じないが、全てにそれを期持するのは相対論の価値の多様化と矛盾する。「寛容の精神は不寛容に対しても寛容であらねばならないか一」のジレンマ。
 「文化現象は一切フェティッシュであり、コトバそのものがフェティッシュの最たるもの」という時に、そのフェティッシュに対置される<本物>など人間にとってはどこにも存在しないことをどのように納得し、私達の意識を空化できるか。文化のフェティッシュ、その無根拠性、本物/偽物図式が成立しえない〈空〉性をはっきり見きわめたうえで初めて私達は<反->を口にすることが可能となるのではないか。自分達の生活世界の一切の根拠を奪い去ることは、私達に安堵と不安を同時に与えるであろう。文化は壮大なフィクション。
 人間は、事物・事象の意味を求めて現象のヴェールを一枚一枚はいでいかずにはいられない欲望があるが、それはヴェールの下にある究極的な絶対存在という"素顔"を見いだすためではなく「ヴェールとは、その下に顔がないことを隠しているものだ」ということに気付くためなのではあるまいか。
 私達は直感的に、表層意識ではディジタルに切り捨てている言葉の多義性や不透明性をしっているのではなかったか。「表出とともにはじめて意味が形成される」その<出来事>を通してそれまで未分節であった生体験が、コトバという受肉現象によって<今、ここ>で差異化される。「言語意識の深層領域には既成の意味というようなものは一つもない。時々刻刻に新しい世界がそこに開ける。一瞬一瞬に形姿を変えるアミーバーのように伸び縮みして、微妙に移り動く意味エネルギーの力動的ゲシュタルトとして現れてくる」(井筒俊彦<意味の深みへ>)
「一切の現実はコトバが織り出していく記号空間としてのテクストであり、こうした現実は客観的実在ではない、ひいては存在自体がコトバによって作られる」
 コトバによって世界が分節され、事物が存在を開始する。意識の表層と深層とに同時に関わるコトバの意味分節作用が、知覚の末端的事物認知機能のなかにまで本質的に組み込まれていて、我々の内面外面に広がる全存在世界そのものは、コトバの存在喚起力にほかならぬ。その下意識的領域にまで垂直に降りていって、そこに働く意味生成のエネルギーの現場を捉えねばならない。
 それが言語のアラヤ識。意味は流動的、浮動的。<我と汝>の相互消融的合一というコミュニオン(交感)的出来事。(丸山圭三郎「生命と過剰」文芸1986年夏季号)


以上、丸山圭三郎氏の言葉である。すでに故人となられたが、その思想はもっともっと論議されてもよかったのでは、と思うほどラディカルである。もっとも大森荘蔵氏のもそうだが、あまりラディカルだとシカトされるのかも。ある人の意見ではこれら両氏の言っていることは「それを言っちゃあお終ぇよ」てなことではないかと。それもそうかもね。野暮ってことかな。でも、そうしたものに面と向いつつ、鼻歌まじりでいくのもイキだと思うけどね。

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  • 2017.05.10 Wednesday
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